近年、小中学生に一人一台ずつタブレット端末等を整備する「GIGAスクール構想」が加速する中、発達障害のある児童生徒らの学習支援にICT(情報通信技術)を活用する動きも少しずつ進んでいます。
前の記事でも聞くことや話すことにつまずきのある子どもたちについて紹介しましたが、この記事では彼らのためのICT教育の活用について紹介します。
聞くことにつまずきのある子どもに対しては、まず、聴覚障害はないという前提で考えていきます。
聴覚障害はなくとも、学級のざわざわした中で教師の言葉が聞き取れない子どもがいます。脳の機能により聴覚情報処理障害であったり、脳や聴覚に障害はなくとも、生まれ持った特性から落ち着きがなく人の話を聞くことが難しいというような場合が考えられます。
そのような場合は、ノイズキャンセリングヘッドフォンの使用が有効です。
また、授業で聞き取ったことを記録することが困難な場合は、ボイスメモなどで録音して、後から聞き直し、学習内容を振り返って復習するということも考えられます。
話すことにつまずきのある子どもに対しては、スマートフォンやタブレット端末による支援が有効です。
最近のスマートフォンやタブレット端末には、テキストの読み上げ機能が搭載されているので、文字を入力して読み上げ機能を使うことで意思を伝えることができます。
こういったICTツールの活用は合理的配慮の一部であり、合理的配慮は、手帳の有無や障害の種別(身体・知的・精神)を問わず、障害の特性によって、社会のなかで困難さを抱えている人すべてが対象となります。(もちろん、発達障害の方も対象です。)
合理的配慮は学校生活だけではなく、社会に出た後の職場でも受けることができます。
例えば先ほどの配慮を職場で受けた場合は、タブレット端末や音声読み上げソフトを使って業務を進めることができたり、ノイズキャンセリング・ヘッドホンなどを使うことで職場の苦痛な音を和らげることができたりします。
学生のうちからICTツールなどを活用した合理的配慮を受けることで、将来働く際にも自分が働きやすい環境を理解し、自らその環境をつくる交渉をすることができるようになります。
個人と社会全体がより持続可能な社会に向かうためにも、相互の理解の元、適切な合理的配慮が成されることを願っています。