「セルフアドボカシー」という言葉を聞いたことはありますか?
あまり聞き馴染みがない言葉だと思います。ですが、特に障害のある方々にとってこの言葉は非常に大切です。
この記事では、「セルフアドボカシー」という言葉の意味を解説します。
1.セルフアドボカシーとは
セルフアドボカシーとは、日本語で「自己権利擁護」と訳されます。障害や困難のある当事者が自分の利益や欲求、意思、権利を自ら主張することを意味します。これは、障害のある人を支援される側として受け身の存在で捉えるのではなく、支援を求めていく能動的な存在としてとらえる視点です。合理的配慮を得るためには本人からの主体的な要請が必要です。そのためには、自分にはどのような支援が必要であるかという自己理解が必要になりますし、必要性を他者に伝えるスキル、主張するスキルも併せて必要になります。そういった意味で、発達障害のあるお子さまにとって援助要請や適切な主張、自己理解は非常に大切なスキルです。
2.セルフアドボカシーのために必要なこと
自身の得意・不得意を知るためのツールとして、自己理解シートの活用が挙げられます。必要に応じて、サポートや配慮を要求する練習を身近な大人とするのも効果的でしょう。
以下にツールの一例を挙げさせていただきます。
出典:国立成育医療研究センターwebサイト8p https://www.ncchd.go.jp/news/2020/leaflet13.pdf
出典:国立成育医療研究センターwebサイト9p https://www.ncchd.go.jp/news/2020/leaflet13.pdf
まず、一枚目のワークシートに自分の強み、苦手なこと、嫌なことを書いてもらいましょう。
自身の得意なことや不得意なことが可視化されます。
二枚目のワークシートには、一枚目で書いたことを踏まえて他者からどのようなサポートが必要かを書いてもらいます。
自分自身を知ることがセルフアドボカシーの第一歩です。
発達障害のある方には、そもそも自分が何に困っているのかが分からないという方も少なくありません。これは、発達障害が個人差の大きい障害であることや、他者と自身の状況を比べにくい障害であることも関係しています。また、ご自身の特性や困りごとを理解していた場合でも、どのような配慮を受けることが適当かということをご本人だけで考えるのは難しいことも多いでしょう。こういった場合は、主治医やカウンセラーなど、ご本人の状態をより客観的に把握できる第三者の意見を聞くことが有効です。
権利を主張するためには練習が必要です。多くの人にとって自分の権利を主張することはあまり慣れない行為かもしれませんが、最終的に自分にとって必要な支援を得るために、自己理解や合理的配慮の依頼の仕方などを支援者の方にサポートしてもらい、少しずつ権利を主張する練習をしましょう。
〈参考〉
『特別支援教育の理論と実践』第4版,2023年4月1日, p.116, 一般財団法人特別支援教育士資格認定協会編
国立成育医療研究センターwebサイト https://www.ncchd.go.jp/news/2020/leaflet13.pdf